民法総則の解説

(後見開始の審判)
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

≪解説≫

後見開始の審判について、説明しておきましょう。

未成年者は、当然に、制限行為能力者です。
これに対し、民法上の成年後見の開始には、家庭裁判所の審判が必要です。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者等の請求により、後見開始の審判をすることができます(7条)。

「事理」とは、物事の筋道。
「弁識」とは、わきまえること。
「常況」とは、つねに、そうだということ。

そうすると、成年被後見人となりうる者は、つねに、物事の筋道をわきまえていない人、精神障害者や認知症の老人などのうち、かなり重症の人です。

ちなみに、民法が規定している法定後見のほか、任意後見契約があります。
「任意後見契約に関する法律」が制定されています。
これは、老後に備えて、締結しておく契約とイメージしてください。


≪解説≫

民法上の法定後見について、整理しておきましょう。
成年後見・保佐・補助の対象となる人たちを、正確に区別して理解してください。

(1) 成年被後見人となりうる者
 精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7条)
(2) 被保佐人となりうる者
 精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である者(11条)
(3) 被補助人となりうる者
 精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である者(15条1項)

民法は、事理を弁識する能力の程度によって、保護のレベルを変えている、ということがわかりますね。


≪解説≫

成年後見開始の審判を請求できる人は、次のとおりです(民法7条)。
①本人
②配偶者
③4親等内の親族
④検察官
⑤その他

①③④は、保佐開始の審判(11条)、補助開始の審判(15条)でも、同じです。
④の検察官は、公益の代表者です。
⑤は、その他、本人を保護すべき立場にある人たち、と考えておけばよいでしょう。