大久保宏明の紹介

(元検事、元弁護士)行政書士・弁理士の大久保宏明です。悪評対策・誹謗中傷対策に取り組んでいます。
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民法総則の解説

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

(最判S30.11.22)
解除権を有するものが、久しきに亘りこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使せられないものと信頼すべき正当の事由を有するに至つたため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、もはや右解除は許されない。

(最判S39.7.28)
延滞賃料が少額であり、これを超える修繕費の償還請求権がある場合、賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除は信義則に反し許されない。

(最大判S41.4.20)
債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは、信義則に照らし、許されない。

(解釈の基準)
第二条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

≪解説≫

人は、生まれてから死ぬまで、権利能力を有しています。
民法上は、母体から全部露出した時が、「出生」です。

胎児には、原則として、権利能力が認められません。
ただし、例外が、3つあります。
胎児は、①不法行為に基づく損害賠償請求権(721条)、②相続(886条1項)、③遺贈(965条)について、生まれたものとみなされるので、権利能力が付与されます。
これらは、胎児に権利能力を与えたほうが公平だ、と考えられているからです。

「生まれたものとみなす」という規定があっても、胎児のままで、母親が代理して、権利行使できるわけではありません。
生きて生まれたのちに、はじめて権利行使できるのです。
胎児は、生きて生まれることを条件(停止条件)として、権利能力を付与されます。
ですから、生きて生まれたのちに(つまり条件が成就したのちに)、胎児の時にさかのぼって、権利を主張できる、という意味なのです。

弁護士報酬わかりやすく 市民も参加、改革へ 日弁連

1991年10月



「料金の仕組みが複雑で、いくら取られるかわからない」と評判の悪い弁護士の報酬について、日本弁護士連合会(中坊公平会長)は、支払う側が納得できるように全面的に見直すことを決め、1991年10月5日、主婦の代表ら一般市民をこの改革案づくりの委員に委嘱した。10月28日、この市民委員と報酬問題を担当する弁護士とで協議会を設け、1993年3月までに結論を出す計画だ。


改革案づくりに加わる市民委員は、主婦代表のほか、民事訴訟法の学者や企業経営の専門家、自治体の職員、労組の役員、調停委員、マスコミ関係者の計7人。


協議会では、弁護士の日常業務の内容、実態などを市民委員に細かく説明し、報酬額と依頼された事件とのバランス、諸外国の状況などを研究。そのうえで、複雑な料金区分や、額の妥当性、算定基準の簡素化など報酬体系のすべてについて、市民感覚を反映させた改革案をまとめるという。


弁護士の報酬は、弁護士に民事訴訟、刑事事件の処理や法律事務を依頼した際に支払う費用で、着手金、判決結果などを受けての「成功報酬」、相談料、鑑定料、顧問料、手数料などがあり、項目ごとに基準額が異なる。


なかでも、着手金と「成功報酬」の規定は複雑で、民事事件では、求める賠償額などによって標準算定率が変わり、事件の内容によって弁護士の判断で30%の増減が認められている。刑事事件では、簡裁や地裁、高裁など裁判所のランクごと、さらに判決の結果によって金額を算出する仕組みで、最低額が示されているだけで上限はない。


依頼者は、このほかに書類作成費や弁護士の旅費などの実費を負担するため、民事上のトラブルなどでは、「弁護士に頼むのは面倒で、金がかかる」と二の足を踏む人が少なくないのが実態だ。


日弁連が1986年、全国の3000人を対象に実施したアンケート調査では、法的なトラブルに遭遇して弁護士に相談した人はわずか2.8%だった。